こんばんは!
パーソナルスタイリスト・服装心理カウンセラーの久野梨沙(@RisaHisano)です。
ファッションで人の心を知り、動かす「服装心理学®」を活用した個人向けスタイリングやスタイリスト育成、講演活動などを行っています。

先日のブログ(おしゃれが楽しくないのは、自分の中の優先順位が決まっていないから!)では、私がテレビで服装心理分析させていただいたレスリングの浜口京子さんを例に、「おしゃれの楽しみは人によって大きく異なる」ことをお話ししました。

でもこれって、改めて人と比べる機会が少ないですから、果たして自分のおしゃれの楽しみってなんなのか、知ることってなかなか難しいんですよね。

そこで今日は、あなたが服を着る理由や、あなたのとってのおしゃれの楽しみって何なのかがわかるヒントと、それを満たす方法をお伝えしていきたいと思います。

服装心理学では「マズローの欲求5段階説」があなたのおしゃれを考えるヒントに

私たちが提唱している服装心理学では、あなたの心の状態をベースに、ファッションとの付き合い方を考えていきます。
その際色々な手法がありますが、今回ご紹介する「マズローの欲求5段階説」に照らし合わせて考えるのも、その方法の1つ。

「マズローの欲求5段階説」ってそもそも何?

心理学に興味がある方にはおなじみのこの理論。
アメリカの心理学者アブラハム・マズロー氏が提唱したもので、人間の欲求は以下のピラミッド図のように階層になっているよね、という理論です。

マズローの欲求5段階説

その下位の階層の欲求から見てみると・・・

1.生理的欲求

食欲や睡眠欲など、生きていくために欠かせない欲求

2.安全欲求

1の生理的欲求が継続して満たされる状態にありたい、という欲求

3.社会的欲求

どこかに帰属して仲間が欲しい、孤独を回避したいという欲求

4.承認欲求

どこかに所属し、さらに他者から認められたい、尊敬されたいといった欲求

5.自己実現欲求

自分の持つ能力を最大限に引き出し、「あるべき自分」になりたいという欲求

という5段階の欲求となっています。

あなたのおしゃれ欲求はどの段階に当てはまる?

さて、この欲求の段階とあなたのおしゃれの理由である「欲求」を照らし合わせると、あなたがどの段階にいるのか、より深く理解できるようになります。

例えば、
「裸で歩いていたら捕まるから服を着ているだけ。服なんかどんなものでも着られればいい」
という人のおしゃれ欲求は1の「生理的欲求」の段階でしょう。
服にまったく関心がない人でも、雪が降る真冬の日はさすがに暖かいコートが欲しくなりますよね。 これも1の段階。

「どうせ着るなら少しでも暖かく、かつ軽いコートが良いな」
「いつでもその季節の気候にあった服を揃えておきたいな」
と思い始めたら、おしゃれ欲求は2の「安全欲求」の段階。

そしてまた1つ上の段階になると
「周りから浮かないような服が欲しい」
と思い始めます。
転職したとき、
「前の職場はカジュアルでOKだったけど、次はスーツを着なきゃいけないようだから、無難なものが1着欲しい」
と思うなら、そのおしゃれ欲求は3の「社会的欲求」の段階です。

ちなみに、おしゃれ好きなアパレル業界人には理解しがたいことのようですが、「周りの人よりおしゃれに見せたい!」というより、「とにかく無難に周りと合わせたい」と思う、この「社会的欲求」の段階にいる人はとても多いのです。

アパレル業界に所属していたり、目指しているような人はこの次の段階以降におしゃれ欲求がある人がほとんどでしょう。

例えば、
「周りから浮かないのは当然として、ちょっとでも周りよりおしゃれに見せたい」
「いち早く流行を取り入れて、『あの人おしゃれ』って思われたい」
なんていう願望。
これが、4つめの「承認欲求」の段階です。

ブログやInstagramにコーデをたくさんUPして、「いいね!」がつくのが何より嬉しい!
(というより「いいね!」がつかなかったら不安でしかたないし、そのコーデは二度と着たくない!なんて人も・・・)
というのも、この「承認欲求」から来る気持ちです。

そして最後の段階になると、人からどう思われるかはあまり気にならなくなります。
それよりも、自分が自分らしくいられるかどうか。
その服は自分ならではのものかどうか、を考える段階に。
それが最後の「自己実現欲求」の段階です。

どんなに奇抜で周りからぎょっとされる服でも、それが自分の信念を表しているのであれば、それを着る!という人もこの段階。

さあ、どうでしょう?
あなたのおしゃれ欲求は今どの段階でしょうか?

おしゃれ欲求の段階=おしゃれの上手さではない!

さて、ここで1つ注意しておきたいのは、これが決して見た目のおしゃれ度合いと対応しているわけではない、ということです。

おしゃれ欲求の4段階にいるからといって、1段階にいる人よりもおしゃれに見えるかというと、必ずしもそういうものでもありません。

その人が何を求めておしゃれをしているかと、その人のコーディネートの完成度は全く別物。
そう考えると、その人のおしゃれ欲求は見た目では全く計れない、ということになります。
極端な話ですが、すごくおしゃれに見えるけど、実は本人は「暑さ寒さがしのげればいいんだよね〜」程度にしかおしゃれに気を遣っていない・・・なんてこともあり得ます。
しっかりヒアリングしてみないと本当のところはわからないんです。

また、欲求は常に上の段階へ進化していくものかというと、そういうわけでもありません
3年前までは5の段階だったけど、環境が変わったらまずは周りに溶け込むことが最優先になってしまって、3の段階になった・・・ということも良くあります

欲求がいくつかの段階にまたがっている人もいます。
周りになじみたいという「社会的欲求」と、おしゃれに思われたいという「承認欲求」を半々持っている人、などです。

自分がどこの段階にいるのかわかってくれる人からしか、適切なおしゃれのアドバイスはもらえません

さて、そして一番お伝えしておきたいことは、
人は、自分が感じている以外の欲求のことをよく理解できない
ということです。

例えば、服なんか暑さ寒さがしのげればいいや、という1の段階の人には、
「少しでも自分らしくいられる服を着たい」という5の段階の人の気持ちは理解できません。

「誰よりもトレンドを先取りしたい」と考えるおしゃれ好きには、
「周りから浮かない無難な服を着たい」と思っている人の気持ちもわかりません。

これが、洋服に関するアドバイスをする/されるときに致命的なすれ違いを生む原因となるのです。
誰しも、自分が持っている欲求が当たり前だと思ってしまいますから、相手にとっては段階の違うとんちんかんなアドバイスをしてしまうことに・・・・。

もちろん、欲求に正解も不正解もありませんから、あなたの欲求の段階を無理して相手に合わせて変える必要はありません。
むしろ、その欲求を理解し、それを満たすためのアドバイスをもらえる人を探すべき

もし、あなたが「周りになじむような服を選んでもらいたい」という社会的欲求の段階にいるなら、それを理解し、その欲求に添ったアドバイスをくれるプロを探して下さい。
相談したショップ店員やパーソナルスタイリストが、 「周りになじむだけじゃなく、やっぱり自分が一番おしゃれに見えるような服がいいですよ!」と、「承認欲求」を満たすようなアドバイスをしてきたら・・・
「あ、この人は私のニーズを理解してくれないんだな」 と判断して、静かに離れて下さい。

「やっぱり『周りよりおしゃれになりたい』と思えない私っておかしいのかも・・・」 なんて悩む必要はまったくありませんよ!
おしゃれの楽しみ方は十人十色でいいんですから、それを理解してくれる人に、アドバイスをもらうようにしてくださいね。

【追記】マズローの欲求5段階説はもはや使えない理論?!

2016年に公開して未だにたくさんのアクセスをいただいているこの記事。
この中で取り上げている「マズローの欲求5段階説」について、こんなツイートが最近話題になっていたので追記しますね。

 

このツイートから始まる一連の流れは、以下にまとまっていますのでご参考に。

[blogcard url=”https://togetter.com/li/1402771″]

 

このツイート主の方は、マズローとはまた違う学派なので、こういう言い方になるのはわかる気がします。

マズローの欲求5段階説のようなモデルは、物事を考えるときの枠組みなんですよね。
なので、マズローもあくまで仮説として提唱していました。

枠組みなので、すべての人がもれなく当てはまるわけでもないし、当然例外も生まれます。
また、考える枠組みは、当然社会の進化によって古くなったり使えなくなったりすることがあります。その場合は新しいモデルを使うことが必要。
ちなみにマズローの欲求5段階説は、マズロー本人が晩年さらに上の段階である「自己超越の欲求」を提唱しています。これを取り入れた方がより今の人間の欲求に近くなりそうですね。

そして、マズローのこの理論は、まだまだ社会科学の分野など現役で使われています。
以下の記事なんかも興味深い。

[blogcard url=”https://aishinbun.com/clm/20181212/1875/”]

この記事を読んでも、「自己超越の欲求」を最上段階に加えた方が、今の人間の欲求を分類するにはピンとくる感じがします。

服装という社会的な営みを考えるときには、進化心理学が今提唱している新しいピラミッドではやはりちょっと捉えづらいので、マズローの理論を活用する方が適しているのではないか、と考えています。
私たちがこうした理論を活用する目的は、お客様のファッションの悩みの主に心の面に焦点を当て、その解決策や根本理由を探るため。
そのために様々な枠組みや分類法を活用して、お客様が自分の悩みを整理するのに役立てて頂いています。
その目的にのみ照らし合わせれば、マズローの理論はまだまだ有益ではないか、というのが私の立場です。

 

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